The Prompt Shelfギャラリーの全ルールを精査し、質・実用性・影響力の面で際立つ20本を選んだ。単に人気があるだけでなく、自分のプロジェクトにも活かせるパターンが詰まった設定ファイルを選んでいる。
各エントリには選出理由と、そこから盗める具体的なパターンを記載した。
選定基準
4つの軸で評価した:
- 具体性 — 曖昧なガイドラインではなく、具体的で実行可能な指示があるか?
- 完全性 — コードスタイル、アーキテクチャ、テスト、プロジェクト固有のコンテキストをカバーしているか?
- 実世界での影響 — アクティブなコントリビューターがいる本番コードベースで使われているか?
- 応用可能性 — 自分のプロジェクトに転用できるパターンがあるか?
20本の厳選ルール
1. Vercel Next.js — CLAUDE.md
Next.jsフレームワーク自体がCLAUDE.mdを同梱しており、現存する中で最も包括的な事例のひとつだ。138Kスターという規模で、最も実戦検証されたファイルでもある。
何が優れているか:モノレポ構造全体をカバーし、App RouterとPages Routerの境界の扱い方を指定し、パッケージごとのテスト期待値を定義し、コントリビューションワークフローの詳細も含む。大規模なTypeScriptモノレポのメンテナなら、ここから始めるべきテンプレートだ。
盗めるパターン: パッケージ・ワークスペース別にルールを分ける。全てをフラットなリストに詰め込もうとせず、コードベースの各領域にヘッダーを使う。
2. n8n Workflow — AGENTS.md
n8nはワークフロー自動化ツールで178Kスター。そのAGENTS.mdは複雑なコードベースをAIエージェントに説明することのマスタークラスだ。モノレポのレイアウト、データベースの規約、APIパターン、フロントエンドコンポーネント基準をカバーしている。
何が優れているか:内部アーキテクチャの詳細さが特出している。単に「TypeScriptを使え」ではなく、各パッケージで使われている具体的なパターンとその理由を説明している。
盗めるパターン: Architecture Decision Records(ADR)をインラインで書く。パターンを選んだ「理由」を説明すると、AIエージェントが曖昧な状況でより良い判断ができる。
3. LangChain — CLAUDE.md
LangChainのCLAUDE.mdは、複数パッケージと複雑な依存関係グラフを持つPythonライブラリのドキュメント化方法を示している。128Kスターで、最重要AIフレームワーク自身のAI設定ファイルだ。
何が優れているか:パッケージ間のインポート規約(LangChainコントリビューションで最も間違いやすい部分)、ユニットテストと統合テストのパターン、langchain-coreとlangchain-communityの関係の扱い方を明記している。
盗めるパターン: プロジェクトに固有のインポート順序規則やパッケージ境界があれば、サンプル付きで明示する。ライブラリプロジェクトで最もインパクトの高いセクションだ。
4. Excalidraw — CLAUDE.md
Excalidrawはホワイトボードツールで118Kスター。そのCLAUDE.mdはカスタムレンダリングロジックを持つ複雑なReactアプリケーション向けのAI支援設定方法を示している。
何が優れているか:キャンバスレンダリングシステム、状態管理のアプローチ、コンポーネント合成パターンを説明している。UIが非標準な(canvasベース、DOMのみではない)プロジェクトでは、このコンテキストが不可欠だ。
盗めるパターン: カスタムレンダリング、非標準の状態管理、ドメイン固有の抽象化など、プロジェクトがユニークなことをしているならAIルールファイルに記載する。コンテキストなしでAIは正しく推測できない。
5. awesome-go — AGENTS.md
167Kスターのawesome-goはGoライブラリの決定版リソースで、そのAGENTS.mdはGoの明快さとシンプルさへのフォーカスを反映している。ルールは簡潔で直接的かつイディオマティックだ。
何が優れているか:Goコミュニティの規範(効果的な命名、エラーハンドリングパターン、パッケージ構成)を、あらゆるAIエージェントが従えるようにエンコードしている。結果として、経験豊富なGo開発者が書いたようなコントリビューションが生成される。
盗めるパターン: 使用言語コミュニティのトーンと哲学に合わせる。Goのルールは簡潔に。Rustのルールは安全性を強調。PythonのルールはPEPを参照。
6. Deno Runtime — CLAUDE.md
DenoのCLAUDE.mdはTypeScript APIサーフェスを持つRustベースのランタイムをカバーしている。106Kスターで、複雑なビルドシステムとクロスプラットフォーム要件を扱う。
何が優れているか:ビルドシステムの癖、プラットフォーム固有のコードパス、RustとTypeScriptの間のFFI境界を記載している。これはコードだけからは推測できない重要情報だ。
盗めるパターン: ビルドシステムをドキュメント化する。cargo buildだけでは不十分な場合、環境変数、フィーチャーフラグ、プラットフォーム固有の手順があれば、AIルールファイルに書く。
7. llama.cpp — AGENTS.md
llama.cppプロジェクト(97Kスター)はMLインフェレンスのパフォーマンスのためにC++を極限まで活用する。そのAGENTS.mdはこのパフォーマンス重視のコードへのフォーカスを反映している。
何が優れているか:メモリ管理、SIMD最適化パターン、クロスプラットフォーム互換性の要件についての具体的な指示が含まれる。ほとんどのAIルールファイルが見落とすレベルの技術的深さだ。
盗めるパターン: パフォーマンスクリティカルなプロジェクトでは、パフォーマンス要件をAIルールに含める。メモリ割り当て、スレッディング、ホットパスの許容パターンを指定する。
8. Bun Runtime — AGENTS.md
BunのAGENTS.mdはZigベースのJavaScriptランタイム(82Kスター)をカバーしている。Zig製プロジェクトのAGENTS.mdとして稀有な事例だ。
何が優れているか:Zig固有の規約、メモリ安全パターン、ランタイムとJavaScriptのセマンティクスの相互作用を説明している。コミュニティリソースが少ない言語では、このドキュメントが不可欠だ。
盗めるパターン: メジャーでない言語を使っているなら、AIルールファイルでより多くの作業をする必要がある。トレーニングデータが少ない言語固有の慣用表現や規約を含める。
9. Grafana — AGENTS.md
GrafanaはGoバックエンドとReactフロントエンドを持つ72Kスターの観測プラットフォームだ。そのAGENTS.mdは1ファイルで両スタックをカバーしている。
何が優れているか:デュアルスタックのカバレッジが綺麗に処理されている。バックエンドのルールとフロントエンドのルールは分離されているが、共通の規約(APIコントラクト、エラーハンドリングパターン)は共通セクションにある。
盗めるパターン: フルスタックプロジェクトでは、ルールをレイヤー別(フロントエンド、バックエンド、共通)に整理する。全てを混在させない。
10. Browser Use — CLAUDE.md
Browser Use(79Kスター)はAIエージェントでブラウザを操作するPythonライブラリだ。そのCLAUDE.mdはフォーカスが絞られて実用的だ。
何が優れているか:非同期パターン、ブラウザ自動化の規約、Webスクレイピング固有の不安定さへの対処方法を指定している。エラーハンドリングのセクションが特に詳しい。
盗めるパターン: 外部システム(API、ブラウザ、データベース)を扱うプロジェクトでは、エラーハンドリングとリトライの規約を記載する。AIエージェントは指示がなければ楽観的なコードを書きがちだ。
11. Zed Editor — CLAUDE.md
Zedはカスタムのフレームワーク「GPUI」で作られたGPUアクセラレーションのコードエディタ(76Kスター)だ。そのCLAUDE.mdはこのフレームワークをClaudeが正しいUIコードを生成できるよう十分に説明している。
何が優れているか:独自のフレームワークをClaudeに教えている。このファイルなしにGPUIの仕組みを知る方法がない。これがあれば、Claudeはイディオマティックなzed UIコードを生成できる。
盗めるパターン: カスタムの抽象化、フレームワーク、DSLがあればAIルールにドキュメント化する。独自のシステムは公開されたトレーニングデータからは学習できない。
12. OpenAI Codex CLI — AGENTS.md
OpenAI自身のCodex CLI(63Kスター)がAGENTS.mdを同梱している。Rustのコードベースで、CLIツール向けのルールの書き方を示している。
何が優れているか:引数のパース、出力フォーマット、エラーメッセージの具体的なパターンを含む。CLIの規約は暗黙知になりがちで、このファイルはそれを明示している。
盗めるパターン: CLIツールには出力フォーマットの期待値、エラーメッセージの規約、引数の命名パターンを記載する。
13. Prisma ORM — AGENTS.md
Prisma(45Kスター)は最も人気のTypeScript ORMで、そのAGENTS.mdはAIエージェントが頻繁に間違えるデータベース固有の規約をカバーしている。
何が優れているか:マイグレーションパターン、スキーマ規約、PrismaクライアントとクエリエンジンのRelationshipを指定している。これにより、AIエージェントが既存データを壊すマイグレーションを生成するのを防げる。
盗めるパターン: データベーススキーマを持つプロジェクトでは、AI設定にマイグレーション規約とデータ安全ルールを含める。
14. Cal.com — AGENTS.md
Cal.comはスケジューリングプラットフォームで40Kスター。そのAGENTS.mdはコードだけでなくプロダクトレベルの制約もカバーしているのが特徴だ。
何が優れているか:ビジネスロジックのルール(タイムゾーン処理、空き時間計算、予約の競合解決)が含まれていて、技術的なコーディングスタイル以上のことをカバーしている。AIエージェントが技術的には正しいが論理的には間違ったコードを生成するのを防げる。
盗めるパターン: ドメイン固有のビジネスルールを含める。複雑なビジネスロジックがあるなら、AIがもっともらしいが間違ったコードを生成しないよう、それを知らせる必要がある。
15. Next.js + TypeScript — .cursorrules
最も人気の.cursorrulesファイル(1,240スター)。TypeScript、Tailwind CSS、Shadcn UIを使ったNext.js開発の包括的なガイドだ。
何が優れているか:適切な部分で主張が明確だ。Server Componentsファーストを指定し、URLステートに’nuqs’を使い、データフェッチングの具体的なパターンを定める。その主張はNext.jsのベストプラクティスに沿っているので、生成されるコードの質が安定して高い。
盗めるパターン: 明確な主張を持つ。「URLステート管理にnuqsを使う」と書いたAIルールは、「ステートを適切に管理する」と書いたものより優れた結果を出す。
16. Vercel AI SDK — AGENTS.md
Vercel AI SDK(22Kスター)はTypeScriptでAIアプリケーションを作る最も人気のライブラリだ。そのAGENTS.mdはストリーミングパターン、プロバイダー抽象化、ツール使用の規約をカバーしている。
何が優れているか:ストリーミングアーキテクチャとツール呼び出しパターンを、AIエージェントが正しいインテグレーションコードを生成できるほど詳細に記載している。ストリーミングAPIには微妙なエッジケースが多く、これが重要だ。
盗めるパターン: ストリーミング、WebSocket、pub/subなど複雑な非同期パターンがあれば明示する。AIエージェントはガイドなしで間違った非同期コードを書きがちだ。
17. CockroachDB — CLAUDE.md
CockroachDBのCLAUDE.md(31Kスター)は厳格なパフォーマンス・信頼性要件を持つ大規模Goコードベースをカバーしている。最も徹底したデータベース関連のAI設定のひとつだ。
何が優れているか:どのサブシステムがパフォーマンスクリティカルか、どの変更にベンチマークが必要か、分散システムのテストパターンを指定している。制約のセクションが特に価値がある。
盗めるパターン: 明示的な制約セクションを使う。「ストレージエンジンをベンチマークなしに修正しない」というルールが、コストのかかるミスを防ぐ。
18. Rails + Ruby + Hotwire — .cursorrules
この.cursorrulesファイル(890スター)はAIルールがJavaScriptエコシステムだけではないことを示している。Hotwire、Stimulus、TurboとのRuby on Railsをカバーしている。
何が優れているか:「Railsの流儀」(設定より規約、薄いコントローラ、モデル中心設計)をイディオマティックなRailsコードが生成されるようにエンコードしている。Hotwire固有のルールが特に有用で、HotwireはAIが間違った解釈をしがちなメンタルモデルを持っている。
盗めるパターン: Rails、Django、Laravelなど規約重視のフレームワークでは、規約を明示する。AIツールはフレームワークを知っていても、そのイディオムを常に尊重するとは限らない。
19. Cloudflare Workers — AGENTS.md
Cloudflare WorkersにはAIエージェントが理解しなければならないユニークな制約がある。V8 Isolateの制限、Node.js APIなし、エッジランタイムのセマンティクス。このAGENTS.md(6,500スター)はそれら全てをカバーしている。
何が優れているか:主にNode.jsコードでトレーニングされたAIエージェントを止まらせるエッジランタイムの制約をドキュメント化している。fsなし、processなし、特定のfetchの動作 — これらは明示しなければならない。
盗めるパターン: エッジワーカー、サーバーレス、組み込みシステムなどランタイムに標準と異なる制約があれば、AIルールファイルの最初に書く。
20. Go Microservice — CLAUDE.md
このCLAUDE.mdはGoマイクロサービス開発(標準ライブラリのServeMux使用)をカバーしている。445スターとリスト内で最小だが、品質とサイズの比率が抜群だ。
何が優れているか:良いAIルールファイルが長くある必要はないことを示している。約100行で、プロジェクト構造、ハンドラパターン、ミドルウェア規約、エラーハンドリング、テストをカバーしている。GoのHTTPサービスに必要な全てだ。
盗めるパターン: 簡潔さは機能だ。一貫した結果を出す最小のルールセットを目指す。簡潔で完全なルールファイルは、膨大なものよりも効果的だ。
優れたルールに共通するパターン
この20本を分析すると、明確なパターンが浮かび上がる。
全員がコンテキストから始める。 効果的なルールファイルは全て、プロジェクトの概要(何を作るか、どんな技術を使うか)で開かれる。
否定ルールを使う。 「クラスコンポーネントを使わない」は一貫したパターンだ。避けることを伝えるのは、すべきことを描写するより効果的なことが多い。
例を含める。 最善のルールは期待されるパターンを示すコードスニペットを持つ。短いサンプルは長い説明の段落より価値がある。
テスト規約を指定する。 このリストのほぼ全てのファイルが、テストの書き方・フレームワーク・ファイルの配置についてのセクションを持つ。
ビルド・開発コマンドを記載する。 npm run devだけでは不十分な場合、ルールファイルで代わりに実行すべきコマンドを説明している。
メンテナンスされている。 これらのファイルはプロジェクトの進化に合わせて積極的に更新されている。6ヶ月前のルールファイルは今日では間違っているかもしれない。
このリストの使い方
- 自分のスタックに最も近いものを見つけ、そのルールファイルを最初に読む。
- 適用できるパターンを特定する。
- 小さく始める。 構造をコピーし、内容はコピーしない。自分のプロジェクトには固有の規約がある。
- イテレーションする。 最初のルールファイルを書き、1週間使い、Claudeが間違えたことを元に更新する。
全ての言語、フレームワーク、AIツールにまたがるサンプルはThe Prompt Shelfの全コレクションで見られる。